森と 空間

研究開発課題 01

里山を含む中山間地域に
おける価値創造

Forest and Space

新たなゾーニング手法で
森を評価し、土地を利活用する

「森」の循環的・持続的な利活用に向けた取り組みが全国各地で進められているが、その多くは「森の変化と人間の経済活動との時間スケールが大きく乖離している」ことを考慮していない。「森」の有する生態系サービスの既存価値を未来にも通じる新たな現代価値に変換する為には、単に3次元空間情報を収集するだけでなく、森林の動態を人間の経済活動スケールにあった時間分解能で予測するという、時間軸を加えた4次元での情報整備が重要である。

また、「森」の有する生態系サービスは、供給、調整、生息・生育地、文化的の4つのサービスに分類されるが、供給サービス(木材の供給等)と比較して、調整、生息・生育地、文化的サービスはその価値が正当(定量的)に評価されていない。
本研究開発課題では「森」の4次元森林情報を利用した新たなゾーニング手法を開発し、バイオエコノミー理念に基づいた里山を含む中山間地域の土地利用・バイオマス利用計画(調整サービス)の策定及び健康増進・環境教育推進を通した「森」の文化的サービスの定量化に取り組む。

研究内容

空間+時間情報を複合した新たな森林ゾーニング手法の確立

森林の情報を詳しく調べるため、LiDARやSfM技術を使って3次元データを集めます。このデータと木の種類や地形の情報を組み合わせて、森林の資源の利用方法を整理します。さらに、森林の成長量を予測して、木材生産や炭素固定能力・生態系サービスなど環境保護に役立つ区分けを行います。その後、再びデータを集めて予測モデルの確かさを確認し、木材を効率よく供給できるシステムを作り、森林の新しい価値を見つけて地域全体の計画を立てます。

密集した背の高い木々が並ぶ広大な森の景色。

バイオエコノミー(バイオマスの高度利用がもたらす新しい経済)の地域計画モデルの開発

森林の4次元情報に気象や産業のデータを加えて、バイオマスの成長量や水の流れ、再生可能エネルギー、生態系サービスを予測するバイオエコノミー計画モデルを開発します。また、独自の指標を作り、土地利用やバイオマス利用の計画を立てます。最終的には、各地域の機能を再評価し、一部の土地利用計画を実現します。モデル開発は神戸大学、京都大学、秋田県立大学が担当し、計画の実施は自治体が行います。

森林資源と土地利用シナリオを示す図表。日本語の説明文と矢印が含まれた技術的なマップ。

森の空間利用がもたらすウェルビーイングの価値化と活動拠点づくり

森の持つウェルビーイング機能を活用し、森林浴、ヨガ、星空観察、森林教育などを行い、心身の健康や経済効果を定量的に検証します。その結果を基に、秋田県全体で事業を広めることを目指します。文化的サービスの定量化や事業の普及は、自治体や東北森林管理局の協力を得て、国際教養大学と秋田県立大学が担当します。

背の高い木々と緑の葉に囲まれた、日差しの差し込む静かな森林の小道。

課題リーダー

高田 克彦の写真

高田 克彦

Takata Katsuhiko

秋田県立大学 木材高度加工研究所
所長 / 教授

高精度な森林ゾーニングを実現し、
森林の多面的経済価値を可視化

本プロジェクトは、従来の森林管理手法に代わり、25mメッシュの高解像度技術を用いて、樹高成長予測や4次元森林情報の整備を行うことを目指します。地域ごとの一律な推定を超え、高精度な森林ゾーニングを実現し、中山間地域の利用計画や森林の文化的サービスの定量化に有効です。

また、10年にわたるプロジェクト期間中に、成長予測モデルの精度検証や改善を行い、質的・量的な木材供給の把握とジャストインタイムな供給システムの構築を目指します。また、日本の風土や文化に合わせた土地利用・バイオマス利用計画の推進はバイオエコノミー社会の実現に向けた先進的な取り組みです。森林サービス産業も定量化研究は前例がなく、新たな地平を開拓する挑戦的な研究になります。

メンバー

  • 熊谷 嘉隆の写真

    熊谷 嘉隆

    Kumagai Yoshitaka

    国際教養大学 国際教養学部
    理事・副学長 / 教授

    サブリーダー

  • 長野 宇規の写真

    長野 宇規

    Nagano Takanori

    神戸大学 農学研究科
    准教授

    リーダー補佐

  • 宇都木 玄の写真

    宇都木 玄

    Utsugi Hajime

    国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所 企画部
    研究コーディネーター

    リーダー補佐

  • メンバー画像がありません

    田中 賢治

    Tanaka Kenji

    京都大学 防災研究所
    教授

  • 櫃間 岳の写真

    櫃間 岳

    Hitsuma Gaku

    (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所 森林植生研究領域
    植生管理研究室長

  • 瀧 誠志郎の写真

    瀧 誠志郎

    Taki Seishiro

    (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所 林業工学研究領域
    主任研究員

  • 中尾 勝洋の写真

    中尾 勝洋

    Nakao Katsuhiro

    (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所 関西支所 森林生態研究グループ
    主任研究員

ソウゾウの森会議

秋田の各地でミートアップを開催し、起業家精神を持った若者が対話や交流を行います。